国際学会「APRAS 2026」参加報告 ― バリ島にてアジアの形成外科医・美容外科医と交流して

カウンセリングや施術のご相談など、お気軽にお問い合わせください!
順天堂大学医学部形成外科学講座 水野博司
2026年9月2日から3日にかけて、インドネシア・バリ島のBali Nusa Dua Convention Centerで開催された「The Inaugural Congress of APRAS 2026」に参加してきました。今回は、その学会の概要と、現地で感じたアジアにおける形成外科・美容外科の現在についてご紹介したいと思います。

APRASとは
APRASは「Asian Federation of Plastic, Reconstructive and Aesthetic Surgery Societies」の略称で、アジア各国の形成外科学会によって構成される国際的な連合組織です。2023年1月に設立された比較的新しい組織ですが、日本、韓国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、パキスタンなど、アジア各国・地域の形成外科学会が参加しています。
形成外科は非常に幅広い領域を扱う診療科です。生まれつきの形態異常、外傷や熱傷、悪性腫瘍切除後の再建、手足の外科、マイクロサージャリーなどの「再建外科」と、より美しく自然な外観を目指す「美容外科」は、決して別々のものではありません。正常な形態と機能を理解し、それを外科的に再現するという意味では、両者は同じ基盤の上に成り立っています。
APRASの大きな目的の一つも、アジア各国の形成外科医・美容外科医が国境を越えて交流し、形成外科・再建外科・美容外科に関する知識と技術を共有することにあります。
私自身、APRAS設立時からCouncil of Delegatesの一員としてその活動に関わってきました。そのような経緯もあり、今回、APRASとして本格的な国際学術集会が開催されたことには感慨深いものがありました。
最新の再建外科・美容外科から再生医療、AIまで
今回の学会では、朝早くから夕方まで複数の会場で同時並行して講演やシンポジウムが行われ、形成外科・美容外科全般にわたる非常に多くの演題が発表されました。

再建外科領域では、マイクロサージャリー、乳房再建、頭蓋顎顔面外科、リンパ浮腫、熱傷、小児形成外科などについて、各国の形成外科医から最新の治療法や研究成果が報告されました。一方、美容外科領域も非常に充実しており、眼瞼形成、フェイスリフト、鼻形成、乳房美容外科、輪郭形成、body contouring、女性外陰部形成、脂肪注入など、現在の美容外科を幅広く網羅する内容となっていました。
例えば顔面の美容外科だけでも、下眼瞼形成術、フェイスリフト、鼻形成術、顔面輪郭形成、脂肪移植による若返りなどについて、それぞれの国の専門家から手術手技や治療成績、合併症を回避するためのポイントなどが提示されました。実際、プログラムには「Deep Plane SMAS Face & Necklift」、「Facelift Surgery」、「Autologous Fat Grafting and Nano Fat」など、現在の美容外科で注目されているテーマが並んでいました。
また、従来の手術手技だけでなく、再生医療やAI(人工知能)と形成外科・美容外科との融合が数多く取り上げられていたことも印象的でした。
幹細胞やPRP(多血小板血漿)、脂肪組織を利用した再生医療についての発表に加え、AIを用いた術後評価や診断、再建手術における合併症予測などについても発表がありました。 2日目には「Technology and AI」という独立したセッションも設けられ、AIを活用した形成外科・再建外科について議論されていました。
美容医療というと、新しい手術方法や機器に注目が集まりがちですが、これからの美容医療では、科学的エビデンスを積み重ねること、安全性を検証すること、そして新しいテクノロジーを適切に医療へ取り入れていくことが、ますます重要になると感じました。
APRASのこれからについても議論
今回のバリ島滞在では、学術プログラムへの参加だけでなく、APRASの将来について話し合うBusiness Meeting for Delegate Councilにも出席しました。実際、学会初日のプログラムにはDelegate CouncilのBusiness Meetingが正式に組み込まれていました。
国際学会を継続的に発展させていくためには、優れた学術プログラムを提供するだけでは十分ではありません。各国の学会がどのように協力していくのか、若い形成外科医の教育や国際交流をどのように促進していくのか、そして今後どの国で学術集会を開催していくのかなど、組織として検討すべき課題が数多くあります。
今回の会議でも、今後のAPRASのあり方や将来の開催国などについて、各国の代表者の間で積極的な意見交換が行われました。
アジアには、日本や韓国をはじめとして形成外科・美容外科が非常に発達している国がある一方、それぞれの国によって医療制度や得意とする治療領域も異なります。こうした多様性を生かしながら、お互いの知識や技術を共有していくことがAPRASの大きな役割になるのではないかと思います。
久しぶりのバリ島で旧友との再会も

今回は実質2日間という短いバリ島滞在でしたが、学会以外にも楽しい時間を過ごすことができました。
国際学会に参加する大きな楽しみの一つが、長年交流を続けてきた海外の友人たちとの再会です。形成外科という共通の専門領域を通じて知り合った友人たちとは、たとえ数年ぶりであっても、会えばすぐに以前と同じように話をすることができます。

今回も会場ではアジア各国の多くの友人と再会し、近況を語り合ったり、それぞれの国の形成外科事情について情報交換したりすることができました。

また、私にとってバリ島を訪れるのも久しぶりでした。せっかくインドネシアまで来たのですから、学会だけで終わらせるのは少々もったいない感もありました。短い滞在ではありましたが、さまざまなインドネシア料理を楽しむこともできました。

特に印象に残っているのが、学会初日の夕方に友人たちと訪れたビーチサイドでの食事です。日中は学会場で最新の形成外科について議論し、夕方には海に沈む夕日を眺めながら仲間と食事をするー国際学会ならではの、とても充実した時間となりました。

国際交流で得たものを日々の医療へ
医学、そして美容医療は常に進歩しています。現在行われている治療が数年後にもそのまま最良の治療であるとは限りません。そのため医師には、国内だけではなく海外にも目を向け、常に新しい知識や技術を学び続ける姿勢が必要です。
同時に、海外で新しい治療法が行われているからといって、それをそのまま取り入れればよいというものでもありません。科学的な根拠、安全性、長期的な治療成績などを十分に検討したうえで、患者さんにとって本当に有益なものを選択していくことが重要です。
今回のAPRASでは、長年行われてきた形成外科手術のさらなる改良から、再生医療、デジタル技術、AIに至るまで、これからの形成外科・美容外科につながる多くの知識と刺激を得ることができました。
そして何より、アジア各国の形成外科医が一堂に会し、国や地域を越えて知識と経験を共有することの重要性を改めて実感しました。
今回のバリ島で得た新しい知識や技術、そして海外の形成外科医との交流から得られた経験を、これからの日々の診療や教育に少しでも還元していきたいと思っています。
カウンセリングや施術のご相談など、お気軽にお問い合わせください!
このページの監修医師








