『最新美容医学でとりたい脂肪がすっきり』
共立美容外科医師グループ 著
第4章 脂肪吸引の実際
※この本は1990年に書かれたものです。現在の治療内容と若干異なる箇所がございます。
皮下脂肪は神様の贈りもの
女性は男性に比ペ、皮下脂肪がつきやすいとはよく言われることです。確かに男性の場合は大綱組織などを含め、腹内の臓器に脂肪が溜りやすく、一方、女性は皮下に脂肪が溜りやすいのです。
その理由はホルモン学上の見地から説くことが出来ます。
でも、どうでしょう。ここは一つ、そんなにむづかしく考えずに、逞しさが求められる男性には筋肉を、赤ちゃんを育てるという大仕事がある女性には、赤ちゃんにとって心地よい柔らかな肌を、神様が贈って下さったのだと解釈したら。
「でも、それならなぜ、赤ちゃんとは関係のないお腹に一番最初に脂肪が溜るんでしょうか」
なるほど、確かに腕とか胸とか、抱くときに赤ちゃんに触れる部分に、まず脂肪がつかなければ理屈が通りませんね。
でも、お腹に脂肪がつくには、これも理由があるのです。
「肝心要め」という言葉のある通り、肝臓と心臓は人間にとって極めて重要な臓器です。
それに、肺。そして、脳という、この四つの臓器は、人体にとってのいわば"VIP"です。
ですから、これらの臓器は、肋骨とか頭蓋骨といった骨によって、ガードされています。
それに比べれば、胃だの腸だのという臓器は、ワン・ランク下がります。ですから、骨でガードはされていません。
ですが、大切なものであることには変わりありませんから、やはり、ガードは必要です。そこで、筋肉とか皮下脂肪が、そのガード役を買っているというわけです。
人間の身体というのは、実に理に適ってよく出来ているものなのです。
お腹の脂肪がこんなにきれいに
そのお腹の脂肪吸引から話を始めることにしましょう。
どこの部位でもそうですが、私たちはまず、カウンセリングで患者さんの希望を聞いた上で、
「ここの脂肪を、こういう具合にとりましょう」
というデザインをします。
脂肪吸引に関しては、このデザインが大事です。そして、そのデザイン通りにカニューレを使って、脂肪をとっていくわけです。
お腹のような広い場所では、一つの方向からの吸引では、きれいに脂肪はとれません。
ニカ所からのアプローチが必要です。カニューレをオーバーラップさせないと、"でこぼこ"が出来やすいのです。
従来ですと、傷跡のことを考えて、おヘソの穴からと、ビキニで隠れる左右の太ももの付け根の部分からのアプローチしか出来ませんでした。おヘソの穴から放射状にカニューレを使い、下の左右二点からとオーバーラップさせて、下腹の脂肪をとるという方法です。
この方法でも下腹部の脂肪はきれいにとれますが、例えば、
「ウエストのくびれがほしい」
などという患者さんには、充分に応えられないところがありました。おヘソの穴からでは、
どうしても限界があるのです。
私たちは今、症例に応じて、第三章でご紹介したKBシースを用いて、両わき腹からのアプローチを行っています。
そんな場所からのアプローチは、KBシースによって初めて可能になったのです。
これですと、まったく理想通り、完壁なプロポーション創りが出来るのです。
KBシースを用いたからといって、傷跡がまったくのゼロになるというわりではありません。非常に小さく、目立たないというだけです。前にもお話しした通り、外縫いはしないですむのですから。
でも、もし、
「たとえどんなに小さくて目立たなくても、わき腹に傷がつくのはイヤ」
という患者さんであれば、従来の方法をとるしかありません。
傷跡というのは、その人の感覚によって見方が違うのです。
よく言うでしょう。半分以下になったらウイスキーのボトルを見て
「もうこんなに飲んじゃった」
と思う人と、
「まだこんなに残ってる」
と思う人がいると。
それと同じです。わずか二、三ミリの傷でも
「傷がついちゃった」
と思う人と、
「こんなの傷のうちに入らない」
と思う人がいるのです。
スレンダーな人こそ脂肪吸引を
近頃の若い女性の方は、本当によく自分の身体に気を遣っていらっしゃいます。
もっとも、ファッションだの健康だのありとあらゆる情報が、目から耳から入ってくる時代ですので、気を遣わざるを得ないという面はあるかもしれません。
いずれにしても、身体に気を遣うというのは大変いいことです。
現役のモデルさんや女子大生の方などで、エアロビクスやスイミング、あるいはダイエットなどをやっていて、充分にスレンダーであるのに、脂肪吸引を希望される方がいます。
そういう方の希望は、だいたい、お腹とふくらはぎです。
この二つの場所は、スレンダーなるが故に、ちょっとでも出ていると目立つ場所なのです。
そうかといってお腹やふくらはぎがちょうどよくなるほどダイエットしたら、顔は痩せこけて、それこそ重病人のようになってしまうでしょう。
「充分スレンダーなのに"脂肪とり"をするとは、なんてぜいたくな」
と"太め"で悩む方はお思いになるでしょうが、実は、脂肪吸引の真価は、
「スレンダーなのに、ある部分だけに脂肪がついていて、それがとれないという悩みを持った人にこそ発揮されるもの」
ということも言えるのです。
なぜといって、太めの方は、脂肪吸引だけでは解決しない場合が多いからです。
ただし、こういうことは言えます。
それは脂肪吸引でお腹の脂肪がとれ、今までより遙かに胴まわりが細身になることによって、ダイエットにはずみがつくということです。
いくら運動やダイエットをしても、ちっとも効果が現れないとあきらめかけていた人が、細身になったお腹をみて、「よし!」という気を起こすのです。
現にお腹の脂肪吸引がきっかけで、その後ダイエットに成功し、スレンダーになった人はたくさんいらっしゃいます。
細いカニューレだから傷つかない
お腹の脂肪吸引に関して、よく受ける質問が五つあります。
まず第一は、
「カニューレで内臓や神経を傷つけることはないのですか」
というものです。これは過日、あるテレビ局、て私たちの脂肪吸引の実際をオン・エアしたことから、頻繁にくるようになった質問です。
なにしろカニューレが一分間に八十回から百二十回という激しい往復運動をするわけですから、それをご覧になった方の中に不安をもたれた方がいらしても不思議はないのかもしれません。
結論から先に言えば、まったく心配はありません。
お腹というのは、皮膚の下に脂肪層があって、その下に筋肉があるのですが、脂肪層と筋肉の間には筋膜という膜があります。
筋肉は幾層にもわたっており、その筋肉の下に腹膜があります。その下が内臓になっているのですが、この腹膜という膜は非常に強靭な膜で、簡単に破れるものではないのです。
テレピでご覧になっておわかりの方もいらっしゃるでしょうが、カニューレはどんなに激しく動いても、皮膚と平行に動いているのです。つまり、脂肪層内を往復するのです。内臓に向かって動くわけではありません。
が、もし仮に、内臓に向けてカニューレを突っ込んだとしても、カニューレの先は丸くなっていますから、強靭な腹膜を破ることはよほどのことがない限りあり得ません。従って、内臓を傷つけるという心配はまったく無用です。
また、脂肪層内には太い神経はありませんので、大事な神経を傷つけるという心配もありません。
ですが、知覚神経を傷つけ、皮膚の知覚が一時的に失われることはあります。それも太い
カニューレを用いた場合に起こる確率が高いもので、私たちの使っている細いカニューレではまず大丈夫と言っていいでしょう。
次の質問は、
「手術中に痛みはまったく感じないのでしょうか」
というものです。
これに関しては"麻酔"のところで充分にお話ししましたので重複は避けますが、術後、
患者さんに「どうでしたか」と尋ねますと、皆さん、異句同音に、
「まるでお腹のマッサージを受けているようでした」
とおっしゃいます。
カニューレの動きが、患者さんにはマッサージのような快いものに感じられるようです。
どうして二度と脂肪がつかないのか
三番目の質問は、
「脂肪をとったら、その場所に二度と脂肪がつかないというのはどうしてなのでしょう」
というものです。
一般の方にとっては、これは誰もが抱く最もプリミティブな疑問かと思います。
ダイエットでせっかく細身になっても、ちょっと油断するとすぐまた戻ります。
そんなことから、お腹というのは「油断をすれば出るもの」という観念を、皆さんがお持ちです。
でも、これはまず、お腹が出るのを、「脂肪がついた」と思うところから、すでに間違っているのです。
(この本の中では便宜上、「ついた」「とれた」で話を進めますが)脂肪組織を形成している脂肪細胞というのは、成人した後は決してふえることはないのです。
ですから、「お腹が出る」ということは、脂肪がつくことではなく、すでにある脂肪細胞の一つひとつがふくらむことなのです。おわかりですか。
要するに、「数の子」が「いくら」になったと思っていただければいいんです。
油断をすれば「いくら」になり、ダイエットをすれば「数の子」になるというのが脂肪細胞なのです。脂肪吸引は、そのふくらんだりしぼんだりする脂肪細胞そのものを、組織ごと取り除いてしまうものなのですから、そうなれば、もはや「数の子」も「いくら」もないわけです。
その場所が、油断しようと何をしようと二度とふくらまない、という理由がおわかりいただけたと思います。
ただし、お腹の吸引の場合、百パーセント脂肪をとってしまうわけではありません。症例によりますが、十五パーセントから二十パーセントくらいは残します。そうしませんと、"筋肉マン"の女性が出来上がってしまいますし、身体にもよくありません。
ですから、残った脂肪細胞は、大食いをすればやはりふくらみます。といっても、千個のものがふくらむのと、百五十個のものがふくらむ状態を想像してみて下さい。ふくらむといってもたかが知れたものです。
今の話に関連したことなのですが、
「脂肪吸引でお腹の脂肪層をとってしまったら、食生活を変えないと、食ペた脂肪が身体の臓器にまわって、健康上問題が生じるのではないか」
と心配される方がいます。
それは身体中の皮下脂肪の九十パーセントもとってしまえば、確かにそういうことは起こります。
脂肪の行き場がなくなるわけですから、内臓にその分まわります。しかし、私たちが脂肪吸引でとる脂肪の分量では、まったくそんなことは起こりま泣ん。心配ご無用です。
たるみは弾力性がカバーする
四番目の質問は、
「脂肪をとった後、お腹の皮膚はたるまないのですか」
というものです。
確かに張り出ているお腹の中を、いわば"くりぬく"のですから、その分、皮膚がたるむのではないかという心配はもっともです。
しかし、人間の皮膚がもっている弾力性というのは、実に大変なものなのです。特に若い人の皮膚は弾力性に富んでいます。
例えば、妊娠を考えて下さい。
あんなに大きくふくらんでいたお腹が、出産の後ベチャンコになっても、皮膚はたるまないでしょう。出産直後のほんの一時期はたるみがあっても、すぐに元に戻るでしょう。
ましてや脂肪吸引では、出産ほどの大きな変化は皮膚に与えません。まったく大丈夫です。
ただし、老年期に入りますと、皮膚の弾力性も衰えてきますので、脱脂をすれば皮膚はたるみます。が、それは、いたしかたのないところです。
ですから、私たちは原則として、六十歳を過ぎた方の脱脂はお断りしているのですが、もちろん、例外もあります。
先日、遠くからわざわざおいでになられた方が、
「どうしても」
とおっしゃるので、手術をしたのです。六十二歳になられるご婦人の方です。
ところが、その後、検診にこられたときに診て、私たちもびっくりしたのですが、たるみが出ないのです。六十歳を過ぎても、まだまだ弾力性に富んだ皮膚をお持ちの方もいらっしゃることを、改めて知らされました。
さて、五番目の質問は、社会復帰に関するもので、要するに、
「どのくらい休みをみたらいいのですか」
というものです。
術後の経過に関しては、後の章で詳しく申し上げますが、一週間はスポンジを当てて、脱脂した部分を圧迫しなければなりません。必要なのはそれだけです。
スポンジは洋服で隠れますし、前にお話しした通り、抜糸の必要もないわけですから、土曜、日曜を利用して手術を受ければ、程度にもよりますが、月曜からふだん通り出社出来ます。
ビール腹はお断り
お腹の話のついでに申し上げますが、俗に「ビール腹」といわれるお腹があります。
特に中年男性に多いお腹で、若い女性がみると何となく「いやらしさ」を感じるものだそうです。なにもお腹がいやらしいのではなくて、その手の中年男性にいやらしいことをする人が多いということでしょう。
セクシャル・ハラスメントなどというのは、まさしくそういった中年男性のために生まれたような言葉で、ビール腹はその象徴とも言うべき印象を若い女性に与えているのに違いありません。
ところで、そのビール腹ですが、これは脂肪吸引の対象とはならないお腹ですので、一言申し上げておきます。
一見、最も脂肪吸引の対象となるように思われがちなのですが、実はまったく逆で、ビール腹は吸引してもほとんどその効果は出ないのです。
あのお腹は、脂肪であんな具合に出ているのではなく、腹圧を支えるはずの腹筋が弛緩して用をなさず、そのためにああしてポコツと出ているのです。
要するに、アフリカ難民などのかわいそうな子供たちのお腹と同じなのです。
あの子たちは栄養不足が原因で筋肉が弛緩しているので、弛緩の原因は違うのですが、出ている原理はまったく同じなのです。
もちろん、ビール腹の場合も脂肪は確かにあります。が、それをとったところであのお腹は引っ込まないのです。
ですから、私たちは「ビール腹お断り」と申し上げるのです。
繭型も過ぎればバイオリン型変形
「ボディ・コンシャスなコスチュームに身を包んだスレンダーな肢体」などといっていたかと思うと、近頃では太めのウエストを、「健康ムードあふれる繭型ボディ」などと言って礼讃しています。
まったくめまぐるしい世の中になったものです。
しかし、いかにファッション界が「繭型ボディ」などとはやしたてようと、大方の女性は、やはりくびれたウエストに限りない憧れを抱いているのではないでしょうか。
その証拠に、お腹の吸引と並行して「ウエストのくびれ」を希望される患者さんが実に多いのです。
繭型とはちょっと違いますが、ウエストのまわりに余分な脂肪がつくのはヨーロッパの女性に多くみられ、これをヨーロッパ人は「バイオリン型変形」と呼んで嫌っています。
繭型も昂じればバイオリン型変形です。そうならないうちに手を打っておく方が賢明でしょう。
前にもお話しましたが、ウエストのくびれにはKBシースが物を言います。
やはり、女性の美しいプロポーションというのは、引き締ったウエスト・ラインから始まるのではないでしょうか。
ふくらはぎを細くする
お腹に次いで多いのが「ふくらはぎ」です。
何といっても、ここは人目に触れる場所ですし、それだけに太ければその太きが露骨に目立つ場所でもあります。
"くびれたウエスト"に憧れる女性が多いと申し上げましたが、ふくらはぎから足くぴにかけてのラインの美しさに憧れる女性も多いのです。
と同時に、厳しく男性の目が光る場所でもあります。
近頃では
「足くぴの細い女性でないと…」
などという男性もふえていると聞きます。
昔は太い足を「本妻足」、細い足を「愛人足」といって、細い足は生活感の薄い足とされていたのですが、もうそんな見方をする人は現代にはいません。
全体にバランスのとれた美しいプロポーションをもっていながら、ふくらはぎだりが異様に太いという女性がいらっしゃいます。こういう方にとっては、他に不満がないだけに、人一倍気になり、悩みの種になります。
そうなりますと、どうしてもここ一番の外出というとき、つまり、人がたくさん集まる場所へ出向くときとか、パーティーに出席するときとか、そういうときにはどうしてもふくらはぎの隠れるものを選んでしまうということになります。
たったふくらはぎ一つのために、コスチュームが限定されてしまうなんて、こんなつまらないことはありません。
「今日のパーティーは、本当はラメの半パンツにシフォンのシャツでも着こなして行きたかったのに…」
などと独り言を言いながら、しぶしぶいつものスラックスをはくハメになるのです。
ドクターのセンスが問われるふくらはぎ
ところで、その「ふくらはぎ」ですが、ここは手術をする側にとっては、美しく仕上げるのに大変むづかしいところです。
お腹のように柔らかな場所ではありません。柔らかではないということは、そのヴォリュームの中に、脂肪だけでなく、骨と筋肉のヴォリュームが含まれているからです。
患者さんによっては、全体に下の方を細くして、ふっくらとしたふくらはぎのピークを上の方に残した、理想的な足に仕上がります。
ですが、そうはならない足もあります。
それは生れつき骨が太く、しかも脂肪より筋肉の多い足です。
私たちは患者さんの要望に応え、最善の努力を尽くしますが、患者さんの希望が、骨や筋肉といった"動かしがたい事実"を超え、あまりにも現実とかけ離れたところにある場合は、理由を説明して手術をお断りすることもあります。
ふくらはぎの脂肪吸引で注意しなくてはならないことは、内側の脂肪をとり過ぎないこと
です。ここをとり過ぎますと、せっかく大腿骨が正常な足であるにもかかわらず、結果的にO脚になってしまうからです。
脂肪吸引における最大事は、どこの部位にも言えることなのですが、"いかにとるか"ではなく、"いかに効果的に残すか"なのです。
「ふくらはぎ」などというのは、特にそれが言える場所で、ドクターのセンスが問われる部位の一つです。
太もものデザインが大切
「ハイレグの水着が似合うようになりたいのですけど」
といっておいでになる患者さんが多くいます。もっとも今の若い女性の方は、みなそう思っていらっしゃるのかもしれません。
"ハイレグが似合う身体"ということは、スレンダーであることが第一ですがいわゆる日本的な体形の場合、私たちがまっ先に考えることは、
いかに足を長くみせるかということです。
ふくらはぎのところで、
「ふくらはぎの場合、ふっくらとしたふくらみを上の方に残し、ピークを高くする」
と言いましたが、それだけで長さの印象もずいぶん変わるのです。
足は細くすれば長く見えるようになるのは当然ですが、ただむやみに細くさえすればいいというものでもありません。
健康的な感じで、見た目にも美しく、しかも長くみえる肢体を創るには、コツがあるのです。
女性の方で、よく"乗馬ズボン"のように太ももの外側に肉がついている方がいます。
こういう方は自然に身体にフィットするものは避けるようになります。ですから、流行の半パンツをはくにしても、プリーツ・タイプのものとか、フレアー・パンツなどに限られ、サイクリング調のものなどは「いっさいダメ」ということになります。
この太ももの外側にたっぷりとついた肉はどうしょうもないもので、ダイエットをしても、それこそガリガリに痩せるまで徹底して初めて落ちるというものです。
もちろんそのときは幽霊のように、青ざめて痩せこけた顔になることを覚悟しなければなりません。
「幽霊」にならずに長年の悩みを解決出来るのが脂肪吸引というわけです。
脂肪吸引なら効果はてきめんです。
こういう方の場合、外側の"乗馬ズボン"の部分をとり、さらに内側の脂肪をとり、その上でヒップの下の脂肪をとります。
この場合、重要なのはデザインです。デザインと、そのデザイン通りに事を運ぶ技術です。
その双方がしっかりしていれば、細くなるだけでなく、「胴長、短足」の印象がガラリと変わって足が長くみえるようになるのです。
この場合も、女性らしいふくらみをどのように残すかがポイントとなります。
デリケートな場所にはデリケートな神経が必要
患者さんの中には、「太ももとふくらはぎを同時にして下さい」と言う方もいらっしゃいます。
が、私たちは一緒にはしません。「しない」のではなくて「出来ない」のです。
太ももからお尻にかけての吸引に、私たちは二時間から、ときには三時間くらいの時聞をかけます。そのくらいの時間をかけないと、理想通りの脱脂が出来ないからです。
なにしろ、とり過ぎは絶対にゆるされない場所てすし、私たちのデザイン通りに行うには、細心の注意とデリカシーをもって、コツコツとていねいにする以外にはないのです。
そうしないと、晴ればれとした顔でハイレグや半パンツを楽しめるような肢体は生まれないのです。
ですから、その脱脂を終えて、続いてそのまま、ふくらはぎというこれまたデリケートな神経を必要とする場所の吸引に入るのは、とても不可能なのです。
両方一緒にするクリニックもありますが、われわれにはとてもそんな超人的なことは出来ません。
するからには疎かにはしたくないからです。
隠せない年を隠す法
女性は年齢を隠す名人です。
あの手この手を使って、巧みに歳を隠します。ですが、どんなに上手に隠しても隠せない場所があります。
そこをみれば歳がわかるという場所があるのです。それは「上腕部」、つまり、俗に"二の腕"と呼ばれる肩とひじの間です。ノースリーヴを着ればわかる場所だけに、これは女性にとっては大問題といわねばなりません。
ところで、それではなぜ、二の腕をみれば歳がわかるのでしょう。
人間の身体には脂肪のつきやすいところと、つきにくいところがあります。
例えば、お腹などというのは最もつきやすいところです。
どんなに若い人でも、ちょっと暴飲暴食をくり返せばてきめんにお腹にきます。
ところが脂肪のつきやすいところというのは、同時についた脂肪がとれやすいところでもあるのです。
ですから、ちょっと太めになったからといって、エアロビクスだのストレッチだのダイエットだのをすれば、どこからとれていくかといえば、最初に肉がついたところからとれていくのです。
ところがつきにくいところについた脂肪というのは、一旦ついたが最後、今度はなかなかとれないのです。
つまり、急激についたものはとれやすく、歳とともにジワジワとついたものは、とれにくいということです。
二の腕の脂肪というのは、まさにそういう「ジワジワ型」のものなのです。
ですから、二の腕の脂肪のつき具合をみれば歳がわかるというわけです。
しかも今の話でおわかりの通り、これを落とすとしたら、足の文数が小さくなるくらい身体中の肉を落ときなければ落ちないのです。
この「上腕部」の脂肪吸引を希望される方は、実は最近非常にふえているのですが、なにも中年の女性だけでなく、二十五、六歳の方も結構いらっしゃるのです。
もっとも、この二の腕ばかりは、「早くとった方が勝ち」という場所ですし、同時に、とったところには二度と脂肪がつかないtいう脂肪吸引のメリットが最大限に発揮される場所でもありますから、若いうちにとっておくのもいいかもしれません。
ベア・パックなども安心して着ることができます。
二の腕の脱脂の場合、カニューレを入れる場所は、大体ひじのしわしわのところ一カ所ですが、とる分量によっては、腕の内側からもアプローチします。
ひじのしわしわだけのアプローチの場合ですと、傷は一週間もすればしわに隠れて、ほぽ完全にわからなくなります。
また、腕の内側からアプローチした場合でも、KBシースを用いますと傷は目立ちません。
美しい横顔に必要なもの
二の腕と同じようにジワジワとついて実に厄介なのがアゴの下の脂肪です。
従って、ここも歳が正直に顔を出す場所であり、同時にダイエットで落とすのは至難のワザといった場所です。
顔、というと誰でも正面を向いた顔を頭に浮べるものですが、横顔の美しさというのはまた格別の趣のあるものです。
しかし、どんなに横顔のきれいな人でも、アゴの下から首すじにかけて肉がつきますと、その美しさは半減するといっても過言ではありません。
その話で思い出したのですが、もう十七、八年も前になるでしょうか、アメリカのある出版社が、世界中の超一流の画家や彫刻家といったアーティストに、
「あなたが最も美しいと恩われる横顔は」
というアンケートを求めたことがあります。
そのとき世界中のアーティストたちが口を揃えてあげたのが、オードリー・ヘップバーンとアンソニー・パーキンスでした。
さすが世界のトップ・アーティストが選んだだけあって、確かにこの二人の横顔の美しさは群を抜いています。
では、二人の共通点はなんでしょう。
それは首が長くて、アゴの線から首すじじかけてのラインが匂い立つほどに美しいことです。
横顔の美しさというのは、目鼻立ちだけではないのです。
それと同等に、あるいはそれ以上に横顔を引き立たせるのは、アゴから首へかけてのラインなのです。
そのラインの美しさは、何歳(いくつ)になっても失わずキープしたいものです。ふだん、歳のわりにさほど脂肪が目立たない人でも、笑ったら駄目です。
笑うとたちまち二重アゴが現われてしまいます。
ここも二の腕と同じように「早くとった方が勝ち」という場所です。
特に横顔の美しい方は、早めに脱脂しておくことをお勧めします。
また、この場所は歳とともにたるみがくる場所でもあります。ところが脂肪吸引をします
と、瘢痕拘縮によって皮膚のたるみがとれ、フェース・リフトの効果もあるのです。
とかく若い女性の方は、
「足を細く、足を長く」
と足のことばかり気になさいますが、アゴから首すじのラインの大切さも忘れないでほしいものです。
の脂肪吸引はドクターの診断力が必要
さて、最後は「頬」です。この頬というのは、私たち脂肪吸引をする側から言わせていただきますと、これほどむづかしい場所はないのです。
頬は、今まで申し上げた他の部位とはまったくといっていいほど次元を異にした場所だからです。
お腹からアゴまでは、とれば必ずその効果が現れる場所です。ところが頬は違うのです。
症例によっては、脂肪をとってもほとんどその効果が出なかったり、出ないばかりか、ときにはまったく逆効果になることすらあり得るところなのです。
ですからここは、ドクターの診断力とセンスとが最も問われるところでもあります。
患者さんを診たとき、効果が生み出せるのか生み出せないのか、という診断力がまず必要です。その診断力に欠けますと、とんでもない結果を生むことになります。
患者さんは、
「頬の肉がとれれば顔も細くなるし、輪郭もよくなるからとってほしい」
と単純に考えます。
ところが頬の場合、脂肪をとったからといって、必ずしも顔が細くみえるようになるとは限らないのです。
「唆筋」という口のまわりから頬へかけての筋肉があります。その筋肉の発達した人は、いくら脂肪をとっても顔が細くはならないのです。
それともう一つ。人聞の顔の町出は骨に準じて出来ていますので、その骨格とのかねあいの問題もあります。
それを無視してやたらに脂肪をとりますと、輪郭が美しくなるどころか、どうしょうもないほどバランスの悪い顔になることもあるのです。
ドクターにとってはそこのところの見極めが肝心なのです。
症例によっては脂肪吸引などせずに、頬はそのままにしておいて細めのアゴを入れるとか、エラを削ったりするとかした方が、患者さんの希望にかなった結果が得られることもあるのです。
しかし、その辺のところは当のご本人である患者さんにはわからないことです。
カウンセリングのとき、そういう話をしますと、不思議そうな顔をされる患者さんもいます。
「頬のふくらみをとってほしいと言っているのに、どうしてそれをとらずにアゴを出すんですか」
というわけです。
そういう方にはくわしく骨格と肉付きの関係をお話して、納得のいくまでご説明申し上げることにしています。
は控えめが肝心
また、骨格とのかねあいをみた上で脂肪を抜けば、間違いなくその効果があるという場合でも、その抜き方というのが実にむづかしいのです。
二十歳そこそこの女性で、ふっくらと頬に脂肪のついた方が、
「出来るだけとって下さい」
と言っておみえになります。
こういうとき、患者さんの要望通り「ハイハイ」とそれに応じて"出来るだけ"とったとします。
そうすれば患者さんは大喜びで、すっかり細めになった自分の顔を鏡にうつして
「これで理想通りの顔になったわ」
とおっしゃるに違いありません。
しかし、この患者さんが、三十代、四十代になったとき、どうなるでしょう。
そのときのことを考えれば「理想通り」というとり方はしない方がいいのです。
これはよくあることですので、この機会に申し上げておきますが、脱脂の後、患者さんが、
「もう少し、とっていただけませんか」
と不満気味におっしゃるくらい、控え目に脂肪抜きをすることが肝心なのです。
そうしませんと、歳をとってから年齢より遥かに老けてみえるようになる恐れが多分にあるのです。
ところが、患者さんの中には、そういう話をしても引き下がらず、
「先のことはそのときになったら考えます。いざとなれば脂肪注入っていう手もあるんでしょう。だから、とにかく今、満足出来るようにして下さい」
などという方もいます。
「わたしにとっては今が肝心なんですから」
というわけです。
しかし、私たちは、最初から修正手術をすることを前提とした手術などというのは考えないのです。
こういう患者さんとは充分に話し合った上で手術を行っています。
シャープな顔になりたいという方へ
第三者の目から見て決して特別に肉がついているようには見えないのに、頬の脱脂を希望される方がいます。
というより、実は頬の脂肪吸引に関しては、ぽっちやりとした人より、そういった若い人の方が多いのです。
「もっとシャープな顔になりたいのです」
私たちが見る限り、充分にシャープなように見えても、ご本人に言わせますと
「この頬の肉がとれて初めて私の理想とするシャープな顔になる」
と言うのです。
頬の肉というのは、健康な人なら誰にでもある程度はついているものなのですが、そのつき具合が気になり出しますと、本人にとっては結構大きな問題となるようです。
また、二十二歳の女性の方で、こんな患者さんがいらっしゃいました。
その方は、日頃ダイエットに心掛けておいでとのことでしたが、もともと太りやすい体質で、ちょっと油断するとすぐ五十キロを超えてしまうのだそうです。
すると、たちまち顔がブルドックのようになって(これはと本人がそうおっしゃったのです)、それがイヤでイヤでたまらないのだそうです。
来院したときは四十四キロでした。
で、その患者さんがおっしゃる仁は、
「もうダイエットに気を遣うのに疲れました。でも、あのブルドックのような顔はイヤなんです。ですから五十キロを超えても今の顔のままでいられるようにして下さい」
というのです。
気持は痛いほどわかります。ですが、それは無理な相談です。
同じようなことを考えていらっしゃる方もおいでと思いますので申し上げておきますが、太ったときの状態を想定して、その分、脂肪を抜いてほしいなどと言われても、それは不可能です。
もし脂肪吸引を望まれるなら、「ブルドッグ」の時点でおいでになること。そうでなければ、私たちとしては手の打ちようがありません。
私たちは、先ほどの「シャープにしてほしい」という女性も含めて、二十代の方には、頬に関しては脂肪吸引をお勧めしません。
理由は今まで述べてきた通りです。上腕部やアゴは「早いもの勝ち」と言いましたが、頬は遅い方が勝ちです。
目次
- 序章
- はじめに
- 第1章
- これだけはまず頭に入れておいてください
- 第2章
- 今、世界の注目は脂肪吸引
- 第3章
- 「脂肪吸引なら共立美容外科」となぜ言われるのか
- 第4章
- 脂肪吸引の実際
- 第5章
- 術前・術後・さまざまな出来事
- 第6章
- 美容手術のあれこれ
- 第7章
- すべての女性に贈る言葉