ニキビや美肌治療で使用するトレチノインを医師が解説。
最終更新日: 2022年10月08日 (土)
トレチノインとは?
トレチノインはビタミンA(レチノール)の誘導体で、肝斑を含む各種のシミ、色素沈着、扁平母斑、ニキビ、小ジワ等の治療に用いられる薬です。
「トレチノイン」とよばれることが多いですが、正式にはトレチノイン酸(オールトランスレチノイン酸)といいます。
軟膏状の塗り薬の形で処方されることが多く、自身の手で患部に塗って使用します。
トレチノイン酸は角質を剥がして、皮膚の細胞に直接作用し、細胞の分裂を刺激して増殖させることで、皮膚のターンオーバーを活性化させます。
そして、メラニンが多く沈着している皮膚の基底層からメラニンを押し上げて、外に排出します。
さらに真皮層にも作用し、コラーゲンの生産促進や皮脂の分泌を抑える働きも持っています。
また、ハイドロキノンを作用させておくことで、新たなメラニンの生成を阻害し、綺麗な新しい皮膚を作り出すことができます。
トレチノインはAHAと相性が良く、併用されることが多いです。
米国ではシワやニキビの治療薬としてFDAにも承認されており、非常に多くの症例に使用されています。
ビタミンAとは何が違う?
トレチノインは「ビタミンAの誘導体」と紹介されることが多いですが、ここでビタミンAとの違いを解説します。
ビタミンA(レチノール)は、体内で利用される際に数種の物質へ次々と変換され、トレチノインになってから効果を発揮するという性質を持ちます。
トレチノインはビタミンAよりも「生理活性が50〜100倍」と言われており、ビタミンAよりも抜群に高い効果を発揮します。
高い効果を発揮する一方、ビタミンAよりも「刺激が強く副作用が出やすい」というデメリットもあります。
これが、トレチノインが日本の化粧品などに配合されない理由のひとつでもあります。
トレチノインが効果的な場合
トレチノインは、下記のような肌悩みに対して効果的です。
- お肌にハリが欲しい
- シワを改善したい
- シミを薄くしたい
- ニキビを治したい
- 美白ケアをしたい
ここでは、様々な肌悩みに対してトレチノインが効果的な理由について解説します。
シミ・美白ケアに効果的な理由
トレチノインは、お肌のターンオーバーを活性化させて早めるはたらきを持ちます。
じつはシミも日焼けも原因は同じであり、メラニンが生成されて排出されずに留まっていると、シミや日焼けへとつながります。
トレチノインによりターンオーバーを活性化させると、生成されたメラニンが積極的に排出されるようになるので、シミが薄くなったり肌色が白くなったりします。
メラニンは少しずつ排出される性質を持つので、数日で劇的に変わるというよりは、少しずつ薄くなっていくというイメージです。
またシミの中にも、トレチノインがあまり有効でないものもあります。
例えば太田母斑やそばかすに対して、トレチノインはおすすめされません。
トレチノインだけでなく他の薬剤も検討して、自分の悩みに合うものを選びましょう。
シワ・ハリケアに効果的な理由
トレチノインは、お肌の真皮層に作用し、コラーゲンの生産促進や皮脂の分泌を抑える働きも持っています。
通常の化粧品は角層まで作用し、真皮層までは届きません。
しかしトレチノインは真皮層まで作用するので、化粧品を用いたシワ対策・ハリ対策よりも効果的といえます。
対策を頑張っていても、加齢とともにコラーゲンは減少していきます。
コラーゲンを補う対策や、コラーゲンの生成をサポートする対策が、重要になってきます。
しかし、コラーゲンが増加していき、目に見えてシワが薄くなっていくのには、ある程度時間がかかります。
少なくとも3カ月〜半年程度のスパンで考えておくのがおすすめです。
ニキビに効果的な理由
トレチノインは、ニキビに関する炎症を抑える効果を持ちます。
皮脂の分泌を抑える働きを持つので、ニキビ予防にも効果的です。
またターンオーバーを活性化させることで、ニキビ跡を薄くする効果もあります。
ニキビに関する薬は、トレチノイン以外にもたくさんあります。
症状に応じた薬を選ぶことが重要になります。
トレチノインを使ったケア方法
トレチノインを使ったケアをする場合は、軟膏やクリームを肌に塗ることが多いです。
1日2回朝と晩に塗る場合と、1日1回晩に塗る場合があります。
使用回数は医師の指示に従いましょう。
内服薬もあり、内側からのアプローチも可能です。
ただし内服薬を取り扱っているクリニックは多くないので、内服薬を希望する場合は事前に確認しておきましょう。
トレチノインは、古い角質が剥がれ落ちていく特徴を持つので、使用を開始して数日間は皮向けが起こることが多いです。
皮向けが起こっても異常ではなく自然な流れであると考えられますが、周囲から「皮がむけているけど大丈夫?」と心配されるほど皮がむけることもあります。
大事な写真撮影などの日を外して使い始めるのはもちろんのこと、できれば外出の少ない時期を狙って使い始めるのがおすすめです。
またトレチノインの効果を感じるのは使用直後ではなく、1カ月程度で少し効果を感じ始め、本格的に効果を感じるのは3カ月以降ということが多いです。
「大事な日の前に美肌ケアを強化したい」と思ってトレチノインを取り入れる場合は、最低でも3カ月前からトレチノインを取り入れるのがおすすめです。
トレチノインはどこで購入できる?
トレチノインは海外では広く利用されており、シワやニキビの治療薬としてFDAにも承認されていますが、日本では未承認の成分です。
トレチノインは、皮膚科・美容外科・美容皮膚科などで購入できます。
保険は適用されず、自費扱いとなります。
インターネット通販で購入できる場合もありますが、通販での購入はおすすめしません。
通販でトレチノインを買ってはいけない理由
通販で購入できる「トレチノイン配合の医薬品」は、製品が本物かどうかを含めて全てが自己責任となります。
トレチノインはもともと刺激が強い薬剤なので、粗悪品を塗ってしまった場合は肌荒れの危険性が上がることも考えられます。
肌を綺麗にしたいと思っているにも関わらず、肌状態が悪化して本末転倒に終わるケースもあります。
また、トレチノインは「刺激が強く副作用が出やすい」というデメリットがあるため、通販で購入して自己判断で使用することは危険です。
クリニックへ足を運び、医師の診察や指導が受けられる環境で、トレチノインを使用することをおすすめします。
トレチノインが気になる場合は
トレチノインを使って美肌へとアプローチしていきたい場合は、必ず皮膚科・美容外科・美容皮膚科で診察を受けて、処方してもらいましょう。
また現在の肌状態によっては、トレチノインを使うことが刺激になり、肌状態がより悪化してしまうこともあります。
トレチノインの使用が適していない場合は、トレチノインよりも刺激が弱いレチノールや他の薬剤の使用が推奨されることがあります。
トレチノインの使用を希望していても、医師の判断により使用を控える場合もあることを頭に入れておきましょう。
トレチノインを使う際の注意事項
最後に、トレチノインを使う際の注意事項を解説します。
トレチノインは刺激が強く、副作用が出やすい薬剤です。
正しい使用方法で使いましょう。
適量を守る
トレチノインを使う際にもっとも大事なことは、適量を守って使うことです。
「たくさん使えば早く効果が出る」ということはなく、適量を守ることが良い結果へとつながります。
適量を超えて使用した場合、肌に刺激を感じたり、肌が荒れたりすることがあります。
適量を超えた量のトレチノインを使うことで、肌状態が悪化することも考えられるため、使用量には気をつけましょう。
また刺激を過度に怖がりすぎて、適量よりも大幅に少ない量のトレチノインを使用した場合、効果がほとんど感じられないことがあります。
刺激に対して不安に感じるかもしれませんが、まずは適量を守って使用してみましょう。
もし肌状態に違和感があれば、医師へ相談しましょう。
使用頻度に気をつける
トレチノインは、1日1〜2回の使用が推奨されています。
適量の使用が重要であるのと同様に、使用頻度も重要です。
たとえ塗り忘れがあったとしても、朝晩以外の使用は控えるのがおすすめです。
また塗り忘れた場合にも、次回使用時に倍量塗ることは避けて、いつもどおりの使い方を続けましょう。
紫外線に気をつける
トレチノインの使用中は、紫外線対策を重視しましょう。
トレチノインは、ビタミンA(レチノール)と同様に光による刺激に影響を受けやすいです。
トレチノイン使用中に紫外線を浴びると、肌荒れの原因となることもあります。
紫外線対策は通常よりも徹底しましょう。
日焼け止めの使用をはじめ、日傘や帽子の着用、長時間の外出は避けるなど、様々な対策を行って紫外線を予防しましょう。
短期間で使い切る
トレチノインは不安定な物質で、空気などに触れるとすぐに失活して、はたらきを失います。
開封したら、できるだけ短期間で使い切ることをおすすめします。
肌状態が落ち着いて、「また肌状態が悪くなった時に残りは使おう」と思って保管しておくのは避けて、次に必要になった際にはまた病院を受診しましょう。
「残っていてもったいない」と感じても、古くなったものは廃棄して新しいものを使いましょう。
また冷蔵保管を徹底し、空気や光に触れないよう気をつけて保管しましょう。
異常を感じたらすぐに使用を中止する
なんども繰り返しますが、トレチノインは刺激が強い成分です。
肌に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止しましょう。
不安に感じたら、医師の判断を仰ぐことをおすすめします。
まとめ
トレチノインは、美肌づくりには非常に効果的な成分です。
ビタミンA(レチノール)の誘導体なのでビタミンAと近しい点も多いですが、刺激の強さなど異なる面も多々あるので、注意が必要です。
刺激が強いという側面があるため、使い方を誤ると美肌づくりどころか肌が荒れることもあります。
使い方には気をつけて、美肌づくりに役立てましょう!
カウンセリングや施術のご相談など、
お気軽にお問い合わせください!