ダイエット注射「GLP-1注射」とは?効果や副作用どを医師が解説。
最終更新日: 2022年05月29日 (日)
食欲を落とし、自然に無理なく体重増加を抑制させる「ダイエット注射」。
食事制限や運動などのダイエットに挫折してきたという方におすすめな肥満症治療方法です。
今回はそんなダイエット注射の中で、「痩せホルモン」と呼ばれているGLP-1を使った注射についてご紹介していきます。
その効果や注射の流れ、打ち方、注意点などを解説。
他のダイエット注射との違いについてもあわせてお伝えしていきます。
痩せやすい体を作るGLP-1注射
ダイエットに必須である正しい食事管理。食べる量を調節し健康的に体重を減らすというのが理想ですが、実際にやってみると思うようにコントロールができず、ストレスを受けてしまった、むしろ体重が増えてしまった…なんて方も多いです。
そんな方におすすめなのがダイエット注射です。
食欲を抑える薬剤を直接注射することで、食事管理をしやすくし痩せやすい体作りをサポート。
ダイエット中のストレス軽減、リバウンド防止にも効果が期待できる肥満症治療法です。
今回ご紹介する「GLP-1注射(GLP-1受容体作動薬、サクセンダとも呼ばれる)」は、そんなダイエット注射の一つ。
インスリンの分泌を促進するホルモンであるGLP-1を用い、血糖値と食欲を抑制し、体重の減少を促します。
GLP-1自体は体の中で自然に分泌されるものですが、体質によって分泌量に個人差があります。
さらに分泌されてしばらくするとGLP-1は「DPP-4」という酵素により分解されなくなってしまいます。
GLP-1注射はこのような酵素に分解されにくくし、作用がより長く続くように調節された治療薬。
継続的に投与することで、食事量が無理なく抑えられ、痩せやすい体へと導きます。
GLP-1注射の効果
GLP-1は小腸から分泌されるホルモンの一つ。
「GLP-1注射」をすることで、以下のような効果を期待できます。
- 血糖値のコントロール
- 食べ過ぎ防止
- 胃の働きを抑制
- 体重増加を抑制
それぞれについて詳しく解説していきます。
血糖値のコントロール
食事を取ると自然に分泌されるGLP-1。
血糖値が高くなった時はインスリンを分泌し、反対に血糖値が下がると低くなりすぎないように調節する働きがあります。
血糖値は高くなりすぎると、血管が傷ついたり、糖尿病を引き起こしてしまうことも。
逆に低血糖は倦怠感や手の震え、冷や汗など自律神経の症状の原因になることがあります。
GLP-1を適切に投与することで正しい血糖値へとコントロールしてくれます。
食べ過ぎ防止
GLP-1の分泌は、食欲の抑制効果もあります。
満腹を早く感じるようになり、食べ過ぎを自然に防止。
結果的に食事量が減りスムーズに痩せることができます。
GLP-1は別名「痩せホルモン」と呼ばれているのもこの食欲抑制作用が理由の一つ。
上記で分泌量に個人差があるとお伝えしましたが、実際に太りやすい人、よく食べる人にはGLP-1の分泌量が少なく、痩せやすい人、少食な人にはGLP-1の分泌量が多い傾向が見られています。
胃の働きを抑制
GLP-1は胃酸を減らし、胃の動きを抑える働きがあります。
胃の働きがゆっくりになることで、食べたものが長く胃の中に滞在。
腸へ運ばれるのを遅らせることで、食後の血糖値上昇を抑えることができます。
胃の中に食べ物が長くなることで満腹感を感じやすくなったり、お腹がすきにくくなるという効果にも繋がっています。
体重増加を抑制
食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐことにより食事管理をスムーズに。
ダイエットをよりストレスなく行うことができます。
GLP-1はもともと糖尿病の治療薬として広く使われてきた薬の一つ。
アメリカではFDA(食品医薬品局)、韓国では食品医薬品安全処など多くの国で承認を得ているダイエット薬です。
体重減少効果が裏付けられており、効率的なダイエットをサポートしてくれます。
GLP-1注射の流れ
それでは実際にGLP-1の注射まではどのような流れで進めていくのでしょうか。
診察から処方までは主に以下のような流れとなります。
- 体重・身長測定
- 診察
- 一般血液状態、コレステロール値、脂肪などを検査
- 採血結果診察
- GLP-1注射の処方
まず最初に体重と身長を測定し、BMI値を割り出します。
ここから医師の診察を通して治療の対象であるかどうか判断がされます。
治療対象であり、実施されることが決まれば③以降へ進みます。
③の検査は「開始時検査」と呼ばれるもの。
この検査の3時間前からは食事、ジュースなど糖分を含む飲み物は控えるようにします。
「開始時検査」の結果は1週間から10日ほどで出るので、そのタイミングでまた病院またはクリニックを訪れます。
検査結果から適切なGLP-1注射が処方されます。
GLP-1注射の打ち方
GLP-1注射は自宅で自分自身で行います。
医師から処方されたGLP-1を1日1回、継続的に打っていきます。
実際の注射の打ち方は以下のような手順です。
- ダイアルを自分が使う量にセット
- お腹の横に垂直に針を刺し、0mgになるまで注入する
- 注入が終わったら6秒ほど待つ
- ボタンを押したまま優しく引き抜く
- 使い終わった注射器はキャップを取り付け、針を外す
慣れてくれば1回1分程度で注射を完了させることができます。
自分自身に注射するとなると最初は怖さや不安がありますが、GLP-1注射の針は非常に細いため思ったほどの痛みは感じません。
まれに内出血や腫れが起きる場合がありますが、そういった場合は打つ場所を少し変えて打つようにしましょう。
注射の打ち方は処方される際に説明があります。
気になることがあればその時に聞いておくようにしましょう。
また、使用済みの注射針は病院やクリニックで処分します。家庭ごみとして処分せずまとめて病院やクリニックへ持っていくようにしましょう。
投与量の目安
GLP-1の投与量は1日0.3mgから最大1.8mgほどです。
最初は0.3mgから始めて、徐々に量を増やしていくやり方が一般的です。
効果や副作用は個人差があるため、食欲抑制効果が見られ、副作用が少ない量を打ちながら判断し適切な投与量を見つけていきます。
0.3mgずつ増やし様子を見ながら毎日打っていきますが、副作用が強く出る場合などは2~3日に一回の注射に切り替える場合もあります。
効果が現れるのはいつ?
GLP-1注射は個人差はあるものの、大体2週間くらいで効果を実感することができます。
海外の3731人を対象とした実験では、GLP-1注射を54週間毎日投与(この実験ではリラグルチドというヒトGLP-1アナログ注射液を3.0mgずつ投与)。
その経過を見たところ、平均で8.4kgの体重減少が見られました。
こちらの実験は日本人以外の肥満者が対象ではありますが、GLP-1注射の効果の裏付けとして参考にできるかと思います。
GLP-1注射はあくまで食欲の抑制、血糖値のコントロールに効果があるもの。
治療をしながら適度な運動を行なうと効率的にダイエットをすることができます。
このような痩せやすい環境と習慣は治療後のリバウンド防止にも役立つので、食事管理と並行しながら少しずつ実践していきましょう。
GLP-1注射の注意点
GLP-1注射にはいくつかの注意事項があります。
副作用、禁忌、相互作用について詳しくご紹介していきます。
副作用
GLP-1注射の副作用は以下のような症状です。
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振
- 胃のむかつき
- 倦怠感
- 悪心
- 下痢
GLP-1は食欲を抑える、胃の動きを抑制するなどの効果があるため、体が慣れるまでにはこのような症状が現れる場合があります。
症状の強さ、副作用が出るかどうかについては個人差はあるものの、一定期間経っても副作用が治らない、日常生活に支障をきたすなどの深刻な症状がある場合は医師に相談するようにしましょう。
禁忌
GLP-1注射は以下のような方は施術を控えるようにしてください。
- 18歳未満、70歳以上の方(未成年は保護者の同意が必要)
- BMI18.5未満の方
- 体脂肪率が男性は15%未満、女性は25%未満の方
- 妊娠中、授乳中または妊娠の疑いがある方
- 糖尿病、膵炎、胆石炎、胆嚢炎、重度の腎機能障害、肝機能障害がある方
- 大きな腹部手術の既往がある方
- 腸閉塞の既往がある方
- 摂食障害がある、疑われる方
- 内分泌疾患やステロイドなどの薬剤による肥満の方
- 甲状腺疾患がある方
- 多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴がある方
- うつ病などの精神疾患がある方
- サクセンダ添加物にアレルギーを持つ方
BMIについては病院やクリニックで測定ができます。
GLP-1注射が適用範囲であるかどうかは最初に病院やクリニックで診断してもらえるので、気になっている方はまずはカウンセリングを受けてみるのもいいかもしれません。
また、サクセンダの添加物というのは、
- リン酸水素二ナトリウム水和物
- プロピレングリコール
- フェノール
などが当てはまります。
これらにアレルギーを持つ方はGLP-1注射は利用できません。
相互作用
GLP-1注射とインスリンや他の糖尿病治療薬を併用すると重篤な低血糖を引き起こすことがあります。
糖尿病治療をされている方はGLP-1注射は控えるようにしましょう。
他にもGLP-1注射の副作用で下痢や嘔吐が見られる場合、ワーファリンの吸収が悪くなることがあります。
不整脈などの予防や治療としてワーファリンを服用している方は注意が必要です。
また、GLP-1注射を行っている期間の過度な飲酒は、肝臓のグリコーゲン生成や糖新生を抑制し、低血糖を引き起こしてしまう可能性があります。
禁酒ではないものの、お酒の飲み過ぎには気を付ける必要があります。
GLP-1注射薬の種類と違い
GLP-1注射にはいくつか種類があります。
製剤によって効果の出やすさや投与回数など違いがあります。
それぞれの投与回数は以下の通り。
- リラグルチド(サクセンダ、ビクトーザ)→毎日
- リキシセナチド(リキスミア)→毎日
- エキセナチド(ビデュリオン、バイエッタ)→週に一回
- デュラグルチド(トリシティ)→週に一回
- アルビグルチド(ダンゼウム、エペルザン)→週に一回
- セマグルチド(オゼンピック)→週に一回
リラグルチド(サクセンダ)は他の製剤よりも体重減少効果が高いことが報告されており、2020年の時点で欧米で唯一肥満治療薬として認可されています。
また、サクセンダとビクトーザは同じリラグルチドの製剤ですが、容量が調節できる量が異なります。
サクセンダの場合は一回に打つ量を0.6mgずつ増やせるのに対し、ビクトーザは0.3mgずつ増やすことができます。
一回に打つ量が多いほど体重減少効果は高くなりますので、副作用が少ない、できるだけ短期間で減量したい方はサクセンダの方がおすすめです。
GLP-1注射薬は、毎日打つタイプと週に一回打つタイプがあります。
週に一回打つタイプは投与量が増えるため、注射針が若干太くなり、注射時に痛みを感じやすくなることも。
効果は1週間持続しますが、副作用も1週間続くため、様子を見ながらダイエット注射を進めていきたいという方には向いていません。
毎日打つタイプは、継続して打つ必要があるため打ち忘れに注意しなければなりません。
注射する時間に関しては食前、食後関係ありませんが、毎日できるだけ同じ時間帯に打つのが効果的。
お仕事などの都合で、同じ時間に継続して打つのが難しいという方は、週に一回タイプのほうが効率的なダイエットができるといえます。
これらのGLP-1薬は注射ですが、自分自身で注射を打つことに抵抗や恐怖心がある方はリベルサスという経口薬もあります。
こちらは1日1回飲み薬として摂取するタイプ。病院やクリニックによって処方できるかどうかが異なるので、気になっている方は事前に問い合わせるのがおすすめです。
今回はダイエット注射「GLP-1注射」についてご紹介しました。
ダイエットで一番難しいといわれる食事管理をしやすくする治療方法。食欲のストレスを減らし、スムーズな体重減少をサポートしてくれます。
自身で注射する必要があるので、副作用や注意点においてしっかり理解してから治療をすすめていくのが大切。
どのような注射なのかもっと詳しく知りたいという方は、病院やクリニックで一度話を聞いてみるのもおすすめです。
共立美容外科ではGLP-1注射を扱っていませんが、脂肪溶解注射でBNLS ULTIMATEを取り扱っています。
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